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イラストレーターYukiの雑記

浮気とも不倫とも違う、「本気で複数の人を愛する」ポリアモリーというライフスタイル

あなたは「ポリアモリー」について知っていますか?

 

おそらくほとんどの日本人は、その言葉さえ聞いたことがないのではないでしょうか。

 

私が初めて「ポリアモリー」について知ったのは、英語学習のために聴き続けているポッドキャスト番組「バイリンガルニュース」の第193回のエピソードを聴いたときでした。

バイリンガルニュース (Bilingual News)

バイリンガルニュース (Bilingual News)

  • Michael & Mami
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このエピソードでゲスト出演しているSaraさんは、日本語と英語のバイリンガルの女性。そして、男性パートナーと関係を「1対1」に限定しない交際を実践しているのだそうです。

 

この、「同時に複数の人と誠実に愛の関係を築く」というライフスタイルが、ポリアモリーです。(それに対し、1対1を前提とする性愛スタイルはモノガミーと呼ばれます。)

 

その存在を知って以来、興味はあるけれど未知のものだったポリアモリー。そのポリアモリーに関して、日本人の若い女性研究者が、綿密なフィールドワークを行って調査した結果をまとめた本を読みました。深海菊絵著『ポリアモリー 複数の愛を生きる』です。

 

ポリアモリー 複数の愛を生きる (平凡社新書)

ポリアモリー 複数の愛を生きる (平凡社新書)

 

 

本書では、アメリカで行われた多数のポリアモリー当事者へのインタビューに基づいた知見が豊富に紹介されており、「ポリアモリーとはどのようなライフスタイルなのか」「その実践者たちはどのような生活をしているのか」を知ることができます。

 

 

 

ポリアモリーとは

複数の相手と性愛関係を築くのがポリアモリー。といっても、「節度なく色んな人に手を出す人がポリアモリー」というわけでは決してありません。ポリアモリーには、重要な条件があるといいます。

 

それは「すべてのパートナーに自分の交際状況をオープンにし、合意の上で関係を持つこと」。パートナーに隠れて複数の人と関係を持つことは、ポリアモリーではなく、単なる不誠実なモノガミーということになるのです。

 

本書の中には、あるポリアモリー実践者のカップル(ポリアモリーの人々には同性カップルも多いそうですが、この場合は男女のカップル)に、彼らの自宅でインタビューをしている最中に、男性の「もう1人の女性パートナー」が現れるというシーンがあります。

 

しかし、驚く筆者をよそに、3人は和やかな雰囲気。訪れた女性はインタビューに答えていた女性に手みやげを渡して親しげに話した後で、男性と二人でデートに出かけて行くのです。

 

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それを笑顔で見送り、「彼女が、さっき話した、彼のもう一人のパートナーよ」と筆者に説明する女性。初めて遭遇すると、どう反応していいのか、戸惑ってしまいそうな場面です。

 

 

ポリアモリーにも色々ある

一口にポリアモリーと言っても、色々な形の関係があるようです。

 

本書では、関係を1対1に限定せずに交際する「オープン・リレーションシップ」、性的関係をグループ内に限定することを約束し、新たな人物が加わる際にはグループ全員の合意を得なければならない「ポリフィデリティ (polyfidelity)」など、様々なポリアモリーの形が紹介されています。

 

興味深かったのは、「シングル・ポリアモリー」と呼ばれる人々が存在することでした。ポリアモリストを自認しているものの、交際相手がいない人をこう呼ぶのだそうです。

 

また、オープン・マリッジに挑戦することを決めたものの、交際したいと思える相手に巡り合えずにいる夫婦のような例もあり、ポリアモリストであっても常に複数の交際相手がいるというわけではないとのことでした。

 

このような、「現時点で恋人が二人以上いるというわけではないのに、自分はポリアモリストであると自認している人々」がいるということを知って、彼らはなんと深く思考する力を持った人たちだろうと思いました。

 

その結論に至るまでには、自分の心との、深く真剣な対話があったに違いありません。

 

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ポリアモリストの一番の悩みは「スケジュール管理」

筆者がたくさんのポリアモリスト達をインタビューする中で、「ポリアモリーの実践において大変なことは何か?」と尋ねると、最も多い回答は「スケジュール管理」だったとのこと。

 

確かに、複数いるパートナーと定期的に会い、どのパートナーにも不満を感じさせずに全員と良好な関係を築き続けるのは大変そうです。

 

また、うっかりダブルブッキングでもしようものなら、いずれかのパートナーとの予定をキャンセルしなければなりません。そして真のポリアモリストならば、キャンセルの理由が「他のパートナーとの予定があるため」であることを、正直に伝えなければならないのです。

 

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面白いと思ったのは、スケジュールの衝突を避けるために、グーグルカレンダーの共有機能を使うという工夫。大学時代、学生に自分の空き時間を知らせるために同様のことをしていた教授がいましたが、こんな使われ方もあるとは…。

 

それでも、誕生日やバレンタインのような特別な日を誰と過ごすかということは、ポリアモリスト達の悩みの種なのだそう。

 

うーん、大変そうです…。

 

 

「モノガミーは複雑、ポリアモリーはシンプル」

色々と困難もありそうなポリアモリーというライフスタイル。しかし、本書でインタビューされている男性クリスさんは、「モノガミーは複雑、ポリアモリーはシンプル」と言います。この言葉は、ポリアモリーの考え方を象徴しているように思います。

 

一人の人間を愛することが誠実な愛であり、どれほど愛していようと、その対象が一人でなければ誠実ではないとするモノガミー社会。

 

それに対して、「なぜ愛する人は一人でないといけないのか?」と問い、「愛する人の人数は自分の意志で決めるべきだ」と考えるポリアモリー。

 

確かに、愛する人を(時には多大な苦しみを伴って)一人に絞るモノガミーよりも、「愛する人はみんな愛する」ポリアモリーの方がシンプルで、自分の気持ちに正直な生き方なのかもしれません。

 

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子どもの頃から「友達が多いことは良いことだ」「友達をたくさん作りなさい」と言われるのに、恋人はたった一人でなければならないことについて、誰かがわけを説明してくれたことは、そういえば一度もなかったなあ。

 

本書を読んで、そんなことを思いました。

 

 

それでも私はモノガミー

アメリカでのフィールドワークを通してポリアモリー研究を続けてきた筆者の深海さんは、よく「それだけポリアモリストと一緒にいたなら、なにか影響を受けたのでは?」と聞かれるそうです。

 

この問いに対し深海さんは、自身はポリアモリストに転身してはいないとしたうえで、次のように書かれています。

 

 

ポリアモリーは素敵な愛のかたちだし、魅力的な生き方だと思うが、今の自分に合っているかどうか、今の自分が望んでいることかどうか、は別の話である。

 

ただ、フィールドワークを行う前と後で、わたしのなかで大きく変化したことがある。フィールドワークを行う前は、ポリアモリーをかなり挑戦的な性愛実験だと思っていた。しかしフィールドワークを終えた後には、一人の人と関係を継続するモノガミーこそ大変な挑戦だ、と考えるようになっていた。

 

 

私にとって、上記の文は本書の中でも特に印象的でした。

 

私自身、本書を読み進めてポリアモリーについて知っていき、共感する部分や納得できる点もあって、読む前とはポリアモリーに対する見方が大きく変わりました。

 

しかし、それでも変わらなかった、やはり自分はそれを選びはしないかな、という思い。上記の筆者の考えを読んで、その理由が言語化できました。

 

それは、一人の人と関係を築き、それを心地よいものとして継続していくということが、それだけでもどんなに複雑で、互いの努力や思いやりを必要とするかということ、

 

そしてそれだけでどんなに幸せかということを感じるから。

 

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そして、1対1の愛であるモノガミーは複雑ということには同意だけれど、今のところ自分には、ポリアモリーはさらに複雑な挑戦のように感じられるから。

 

だけど、だからといってポリアモリーに対して嫌悪感など全く持っていないし、これからもポリアモリーについて知っていきたいです。

 

それに、私と違ってポリアモリーのライフスタイルが向いているという人もいるだろうから、日本でもどんどん認知度が高まっていけばいいなと思います。

 

大事なことは、意識的に、選択的に生きること。私はモノガミーだけれど、ポリアモリーについて知ったうえでの、選択的モノガミーでいたいと思います。

 

それは、「あなたはポリアモリーですか?」と聞かれた場合に、「いいえ、今のところモノガミーです」と答えられるようにしたいってことです。多くの日本人は、おそらく上記の質問をされても、「はっ?ポリアモリー?何それ?」となってしまうでしょう。

 

自分と異なるものについて、知っていきたい。そうでないと、自分が選んでいるものについて理解できないから。

 

 

まとめ

筆者がポリアモリー実践者ではないことが、本書の良い点だと思います。終始ポリアモリーについて客観的に説明されており、筆者にも理解できなかった点は「理解できなかった」と書かれていて、押しつけがましくないため、心地よく読めます。

 

1対1の関係に悩んでいる人、ポリアモリーの具体的な生活や悩み、出会いや別れについて実例を知りたい人、そして、自分はモノガミーだと思うけれど、ポリアモリーについても理解したいという人に、強くお勧めしたい1冊です。

 

ポリアモリー 複数の愛を生きる (平凡社新書)

ポリアモリー 複数の愛を生きる (平凡社新書)

 

 

また、ポッドキャスト番組「バイリンガルニュース」の第193回では、ポリアモリー実践者であるSaraさんのトークを聞くことができます。3時間41分に及ぶトークは、ポリアモリー関連の話以外にも興味深いエピソードでいっぱいです。興味のある方はこちらもぜひ聴いてみてください!

 

 

Yuki