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イラストレーターYukiの雑記

主張を良くしてくれるものは反論―前回の記事の反省と、他人に考えを伝えるということについて

前回、「必要に迫られないと生産性は上がらないのならば、日本は生産性大国になれる―村上由美子著『武器としての人口減社会』を読んで」という記事を書きました。村上由美子氏の著書を読んで、日本は人口減少を武器にできるのだと思った、という話でした。

 

yuki222.hatenablog.com

 

 私が記事をアップするといつも彼氏が読んでくれるのですが、その彼が、この記事についてくれた感想は「うーん、よくわからなかった…」というものでした。

 

え?どうして?

 

あの記事では、「みんな、人口が減るばかりの日本の未来は暗いと言うけれど、実はそれが武器になりうるんだよ!」ということを、結構な熱量を持って訴えたつもりだったのですが…。言いたいことが、どうして伝わらなかったんだろう?

 

彼と話し、自分でも主張をもう一度分析し直して、突っ込んで考えてみました。

 

 

ロジックの穴を指摘されて面食らう

私のロジックはこうでした。

 

前提:世界中で、生産性の向上が課題である。

 

① 人口が増えている国では、雇用の確保が重要である。

② テクノロジーによる生産性の向上は、短期的には雇用を奪うため、人口増加中の国では進展しにくい。

③ 日本では人口が減っているため、「仕事の量>人口」の状態になる。

④ 少ない人口でさばききれなくなった仕事をやってくれる存在として、テクノロジーは歓迎される。

人口減少社会では、テクノロジーによる生産性の向上が進む!

 

彼に一生懸命これを説明してみると、彼は「人口が減ったら、仕事も減るんじゃないの?」と言いました。つまり、上記のロジックの③の部分に納得できていないということです。

 

そう言われて面食らってしまった私は、すぐには反論できませんでした。

 

あれ?そうだっけ?そうなのかな?

いや、そんなことはない気がする。でも、どうしてだっけ…。

 

もう寝る直前だったので、議論はそこまでにして、二人とも布団に入りました。でも私はどうしてもモヤモヤして寝付けませんでした。

 

これからの日本では、人口が減るけれど、仕事はそれほど減らない。それは確かだったはずだ。でも、どうしてだったっけ…。

 

以前読んだ本に書かれていたことや、専門家が言っていたことを色々思い出していて、ようやく重要なことを思い出しました。

 

そうだ。これからの日本社会の変化のポイントは、単に人口が減ることじゃない。労働人口が減ることだった!

 

出生数の落ち込みで人口も減るけれど、最大の問題はそこではない。全人口に占める「労働人口」、すなわち生産できる人の割合が小さくなって、子どもや高齢者などの「財やサービス、インフラ等の消費・利用はするけれど生産しない人たち」の割合が相対的に大きくなっていく。だから、人に対して仕事が多すぎる状態になるんだ。

 

このことをすぐにでも彼に話したかったのですが、もう寝ていたので何とか我慢して、翌日になってから話しました。すると彼も「それなら納得できる」と言ってくれました。

 

ちなみに労働人口は「生産年齢人口」という言い方もされ、15歳以上65歳未満の人がこれにあたります。それ以外の人々は、「従属人口」や「被扶養人口」と言われます。人口問題については、記事を改めてまた書きたいと思います。

 

 

主張をブラッシュアップするものは反論

今回実感したことは、自分では筋が通っていると思う主張でも、他人にわかりやすく伝えるためには、一つ一つのステップについてしつこく「本当にそうかな?」と問い直すことが大切だということでした。

 

今回の場合は、「人口が減ってゆく日本では“仕事の量>人口”の状態になる」という自分の論に対して、「本当にそう?」「仕事過多の状態になる原因は、本当に“人口が減ること”?」と自問する必要がありました。

 

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自分のロジックに問題点がないかどうか、自分で批判的にチェックする。

 

実はこのことは、研究者時代に嫌というほど実践を通して身につけたつもりでいたのですが、いつの間にかおろそかにしてしまっていたようです。

 

自分の主張をどこかで発表する前に、とことん自分で自分に反論しようとしてみることは、ロジックをブラッシュアップさせることにものすごく効果があるんですよね。そしてやはり一番いいのは、他人に客観的なフィードバックをもらうことだなとも思いました。

 

私にとって人口問題はとても関心のある分野で、これまでに何冊か関連書籍を読んだり、専門家の発信をフォローしたりしていて、多少詳しくなっていました。そうやってこのトピックについて深く知るうちに、「今後の日本は、人口減少社会で、人に対して仕事量が過多の状態になる」ということは、自分の中では当たり前のことになってしまっていたのです。

 

研究者の仕事でもよくあると思うのですが、ある程度複雑な論を構築していると、主張の土台となる前提の部分の説明が不十分なまま、メインの主張に進んでしまうことがあります。

 

「言いたいのはこれ!」という部分に向かって突っ走っているとよく起こるのですが、これをしてしまうと、他の人々を置いてきぼりにした、自分だけが深く納得して突き進んでいる独りよがりな主張になってしまいます。また、ベースの部分の詰めが甘いと、研究発表の質疑応答などでは、ごく基本的な質問に答えられなくなったりして痛い目を見ます…。

 

主張を組み立てるときに、ワンステップごとにしつこく妥当性や論理性を正していくことは、面倒でもありますが、しっかりと行えば主張が一段も二段も良いものになります。

 

前回の記事を修正しておこうかと考えたのですが、今回再認識した「自論を批判的に見直す」ということの大切さを今後も忘れずにいたいという思いから、こうして記事を書いてみました。

 

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